1990年度 金石中学校 1年5組 学級通信「Sophia」
第109号(1991.3.1発行)
戦争反対!
死ぬのはいやだ!
殺すのもいやだ!!
ということで,2月7日に行った「人間はなぜ戦争をするのかアンケート」の集約の結果と,いくつかの解説,担任の論評などを載せてみます。
1.湾岸戦争について
@湾岸戦争が起こったということを聞いたとき,まず何を思いましたか?
・日本にも攻撃がくるのでは。日本もまきこまれたらどうしよう。 | 5 |
・やっぱり始まったか。ついに始まったか。 | 4 |
・信じられなかった。 | 4 |
・どうして戦争なんかするのか! | 4 |
・戦争でまた人が死んでしまう。 | 2 |
・多国籍軍は勝つのだろうか。 | 2 |
・石油はどうなるのだろうか。高くなるのか? | 2 |
・また世界で戦争が起こった。 | 2 |
・第三次世界大戦が起こったらどうしよう。 | 2 |
・何が原因で戦争は起こったのだろうか? | 2 |
以下,一人の回答。 | |
・早く終わってほしい。 | |
・腹が立つ。 | |
・こわい。 | |
・日本は平和でよかった。 | |
・別に何も感じない。関係ない。 | |
・湾岸周辺にすんでいる人は大丈夫だろうか。 | |
・しかたがない。イラクが悪いんだし。 | |
・テレビをつけよう。 |
現地時間,1月17日午前2時30分,米軍を中核とする多国籍軍が,イラクとイラク占領下にあるクウェートに対し,大規模な空爆を開始しました。
日本では,午前8時30分。
学校は始まっていました。
すでに国連決議の撤退期限1月15日が過ぎていたこともあり,実際には戦争は始まっても不思議ではなかったのですが,「でも戦争なんておこらんやろ」という,日本人らしい(?)安易な考えを私はしていたのでした。
生徒諸君の中にもこういうことに興味のある者がいて,16日の段階から,「先生,戦争起こった?」と聞きに来る者もいたのですが,16日は何事もなく過ぎたのでした。
私が戦争について知ったのは,1限目が終わってから,つまり9時30分過ぎでした。何やら職員室のテレビがにぎやかだと思ったら,戦争が始まった,ということでした。
初めてそのことを聞いたときには,前回の坂東玉三郎じゃないけど,何ということになったのかと,ふっと体の力が抜けるような感じでした。
あーあ,人間ってやっぱりだめなんやな,というあきらめというか,自分なんて何もできないんだなという無力感みたいなものを感じてしまいました。
さて君たちの感じ方はというと,関係ないと答える人は少なくて(1名)みんな何らかの感想,特に,どうしてこんなことになるのか,という素朴な疑問と,自分たちの身の回りに関係してくるだろうかという心配とが目立ちました。
まずは,イラクがどうとか,多国籍軍がどうとかいうことはなくて,戦争そのものに対する感想という感じの答でした。
Aテレビで戦争のようすを見ましたか?
見た | 見ていない | |
男子 | 14 | 3 |
女子 | 16 | 1 |
湾岸戦争が始まったのが1月17日,このアンケートが2月7日だから,その間3週間。
テレビ時代の君たちだから,きっと全員が何らかの映像を見ただろうと思ったら,全然見ていない人もいました。
全体の1割が見ていないということですが,しかし,ニュースくらいは聞いたんじゃないかな。
Bテレビ画面を見て感じたことがあれば、いくつでも書いて下さい。
・死んだ人,被害を受けたところを見て,かわいそうだ。残酷だ。 | 13 |
・ミサイルの恐ろしさ,正確さ,破壊力のすごさを知った。 | 6 |
・こわい。 | 3 |
・早くやめてほしい。 | 3 |
・写りが悪い。映像がきたない。 | 3 |
・すごい。すごい迫力 3 | |
・廃虚になり,やりきれない。 | 2 |
・かっこいい。 | 2 |
・花火みたいだ。 | 2 |
以下少数意見。(1名の回答) | |
・腹が立つ。 | |
・おもしろい。 | |
・戦争反対。 | |
・どうしてこんなことをするのか。 | |
・我々のところにミサイルが飛んできたらどうするのか。 | |
・軍事評論家という人がいたんだなあ。 | |
・軍事評論家の言うことはワンパターンだ。 | |
・お金をたくさん使うのにびっくりした。 | |
・広島をくりかえすな。 | |
・スカッドミサイルはたいしたことない。 |
今回の戦争は今までにない戦争でした。(ですというべきか)それは,テレビによる生々しい報道ということです。
空爆を受けるバグダットの映像が,その日のうちにすぐ見られるなどというのは,今までの戦争からは考えられません。
たとえば,ミサイルで攻撃されるイラクの建物が,戦闘機からのカメラでとらえられ,それが爆破されるようすが見られるなどということも,これまでにないことでしょう。
それは,あたかもテレビゲームのシミュレーションのように……
だから君たちが,案外これらの映像を見て何も感じないのかなあと思ったし,むしろゲーム感覚でみるのじゃないかなあと思ったのだけど,案外とそういうのは少なかったです。
C今現在,湾岸戦争について思うこと,感じること,考えることがあればいくつでも書いて下さい。
・早く終わらせてほしい。 | 11 |
・ペルシア湾の原油流出で,環境や生き物が大変だ。 | 9 |
・石油はどうなるのか。石油は高くなるのではないか。 | 6 |
・イラクは早く撤退せよ。 | 5 |
・フセイン大統領は一体何を考えているんだ。 | 5 |
・この後何人死ぬんだろうか。 | 5 |
・何のための戦争なのか。 | 3 |
・戦争は反対だ。 | 3 |
・アメリカ軍は強い。 | 3 |
・すごくお金を使っている。 | 3 |
以下2票ずつ。 | |
・あそこに住んでなくてよかった。 | |
・なかなか戦争は終わらない。 | |
・日本はもっと協力すべきだ。 | |
・化学兵器を使うな。 | |
・核兵器を使うな。 | |
・イスラエルはどうするだろう。 | |
・イラクは核兵器を使うのだろうか。 | |
以下少数意見。(1名の回答) | |
・最小の被害で終わらせてほしい。 | |
・こわい。 | |
・すごい兵器がある。 | |
・日本は自衛隊機を出すだろうか。 | |
・陸上戦に持ち込め。 | |
・イラク軍は思ったより強い。 | |
・話せばわかる。 | |
・サダム=フセインはこの後死刑になるだろうか。 | |
・戦後処理はどうするのだろうか。 | |
・テレビの特別番組で,番組が変わって困る。 |
さて,これらの君たちの考え,感じたことはかなり現実的で,まともなのだなあと思いました。
きみはほかの人の考えを聞いて,どう思うかな。
さて,この特集第2回は,残りの戦争全般に関するアンケートの集約の結果です。
なお,前回書き忘れましたが,総回答数は34名(35名中1人欠席)です。
2.戦争全般について
@第二次世界大戦終結(1945年)後国際連盟がつくられました。
そのあと,昨年(1990年)までの間に,世界で戦争をした国はいくつくらいあると思いますか?
0カ国−−−−−− | 0 |
1 〜5 カ国−−− | 9 |
6 〜10カ国−−− | 7 |
11〜15カ国−−− | 4 |
16〜20カ国−−− | 4 |
21〜 −−−−−− | 2 |
50〜 −−−−−− | 3 |
100〜 −−−−− | 2 |
わからない −−−− | 3 |
さすがに0カ国という人は1人もいません。
(当たり前だけど)それでも10カ国以内という人で,すでに半数近くをしめてしまいます。
現在この数については担任としても研究中なのでわかりませんが,10カ国は優に超えてしまうでしょう。
つまり,君たちは第2次世界大戦後,戦争をした国はかなり少ないとみているということです。
しかし,それはまちがいで,国際連盟ができたにもかかわらず,人類はひんぱんに戦争をくりかえしているということです。
ちなみに,現在の国連加盟国は159カ国。
何とたくさんの国があるのでしょうか。
それだけ国があれば,争ってしまうのも無理がないのか……
今回のイラクを含めて,中東では当たり前のように戦争がありましたし,さすがにアメリカとソ連の戦いはありませんでしたが(それがあると,地球上には今ごろ人間は生きていない)アメリカはどこかの国と,ソ連もどこかの国と,そしてイギリスも,フランスも,中国も戦争をしているのです。
人間というのは,救いようがないですね。
さてそこで,戦争をした国で知っている国名をあげてもらいました。
A第二次世界大戦終結(1945年)後,昨年(1990年)までの間に,世界で戦争をした国で,名前を知っている国があったら書いて下さい。
・イラク −−−− | 28 |
・イラン −−−− | 27 |
・ベトナム−−−− | 18 |
・アメリカ−−−− | 10 |
・ソ連 −−−− | 7 |
・南北朝鮮−−−− | 4 |
・イスラエル−−− | 4 |
・クウェート−−− | 4 |
・東西ドイツ−−− | 3 |
・中国 −−−− | 3 |
・イギリス−−−− | 2 |
・フランス−−−− | 2 |
以下回答数1
エジプト、ペルー、ブラジル、アルゼンチン、日本、南アフリカ、オランダ、ニュージーランド
日本をぬかしてほとんどという回答−−−1
知らない,わからない −−−3
やはり,イラン・イラク戦争のことは知っているようです。
何となく,そうじゃないかなというので書いた人も多かったようです。
なお,東西のドイツは戦争をしたわけではありません。
つい最近東西ドイツの統合が行われましたから,けんか分かれしていたと思っている人も多いようですが,そうではありません。
第2次世界大戦後に分断されてしまったということです。
お互いに戦争をしなかったのだから,統合もできやすかったのかもしれません。
それに対して南北朝鮮はお互いに戦争をしてしまいました。
同じ民族なのに……だから東西ドイツのような統合が難しいのかもしれません。
また,もちろん日本も第2次世界大戦後は戦争をしていません。
日本国憲法で戦争放棄をしたからです。
B20世紀の間(1900年から)に,世界で戦争をした国はいくつくらいあると思いますか?
0カ国−−−−−− | 0 |
1 〜5 カ国−−− | 3 |
6 〜10カ国−−− | 1 |
11〜20カ国−−− | 8 |
21〜 −−−−−− | 5 |
50〜 −−−−−− | 6 |
100〜 −−−−− | 6 |
わからない −−−− | 3 |
では20世紀の間に戦争をした国となると,もうそれはあきれるほどたくさんになるでしょう。
戦争をしない国をさがす方が難しいくらいです。
日本だけをとってみても,日露戦争(1904年)第1次世界大戦(1914年)第2次世界大戦(太平洋戦争1941年)と,すぐでてきます。
Cあなたは戦争に行きますか?
1.行かない
2.戦闘以外(医療活動や輸送など)ならば行く
3.戦闘でも行く
そして,その理由は?
1のいかない人(男子13人,女子13人)の理由
男子 | 女子 | |
・死にたくない。 | 11 | 5 |
・人を殺したくない。 | 0 | 4 |
・こわい。 | 0 | 3 |
・家族といるのがいい。 | 1 | 2 |
・残酷なところを見たくない。 | 1 | 1 |
以下一人の回答。
男子
・めんどう。
・危ない。
・軍服がいやだ。
・行っても得にならない。
・つまらない。
女子
・つらい思いはしたくない。
・女だから,戦争は男の人にまかせる。
・話し合いをまずする。
この理由のおもしろいところは,男子は行かないと答えた人13人の内11人,つまりほとんどの人が,死にたくないという答でした。
それに対して,女子も13人が行かないと答えましたが,死にたくない5人,殺したくない4人とともに3分の1ずつでした。
そして,男子には殺したくないというのがなかったのです。
このちがいはどこからくるのでしょうか?殺したくないというのは,やはり母性本能なのでしょうか?
3の戦闘でも行く人の理由はそのままコピーしてみました。
本当は,戦争に行くなんて言ってほしくないんだけどもね……。
さて,このアンケート集約も最後の部分です。
D人間はなぜ戦争をするのでしょうか?思いつくことをいくつでも書いて下さい。
・侵略,占領,国を広げるため。 | 11 |
・人間はバカである。理性がない。 | 11 |
・両者ゆずらない。話しをしてもわからない。意地をはる。 | 10 |
・人間にはそういう欲望がある。 | 8 |
・権力を広げたい,英雄になりたい人がいる。 | 5 |
・国の強さを見せるため。 | 3 |
・資源が公平でない。 | 2 |
・考え方が古い。 | 2 |
人間自身の性質,人間性というものを理由として考えた人がほとんど。
次に,国というものの存在からくる理由を考えた人が半分くらい。
だいたい以上の2つの理由にまとめられるようです。
これについてはしっかり歴史を勉強して下さい。
やはりわれわれは過去の歴史に学ぶことが大切です。
E人類から戦争をなくすために,あなたのできることにどんなことがあるでしょうか。
思いつく限りいくつでも書いて下さい。
・戦争反対運動(募金,署名,デモなど)をする。に協力する。 | 11 |
・人と仲良くなるように心がける。わがままをなくす。 | 10 |
・兵器,軍隊に関係のあるものをなくす,減らす,つくらない。 | 5 |
・物や,資源を大切にする。 | 2 |
・開発を人類のためへと向ける。 | 2 |
以下回答1人
・人種差別をしない。
・偉い人になったら止める。
・国をなくし,個人で生きる。
・祈る。
・まちがったことをやらせない。
・キリスト教を信じる。
・フセインのようにならないようにする。
まずは何らかの運動をするという人がいちばん多かったようです。
そして,そんな他の人への働きかけのほかに,自分自身のこと,人間の内面のことが出てきました。
君たちが主人公になる21世紀が,本当に平和な世界になるように,一人一人が努力をしていってもらいたいものです。
もちろん,問題は平和以外にもいっぱいあります。
環境破壊や,飢餓,人種差別,資源問題など,どれをとってみても,これからの君たちの生活にかかってくることばかりです。
どこか遠くのことだからといってすませるわけにはいきません。
すぐに自分たちのところにふりかかってくる問題なのです。
本当に人類が,そして,人類とこの地球が共存できるように,考えて,行動する大人になっていってもらいたいものです。
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