10月20日(金)
宿泊地:雲の上
いよいよロンドン最後の日である。そして,欧州最後の日でもある。
午前中は自由なのであるが,みんなでどうするか話をした結果,まずはマダム・タッソー蝋(ろう)人形館へ行くことにした。
そして,その後は自由にして落ち合う時間だけを決めた。
地下鉄を乗り継ぎ,目的地に向かう。朝の通勤時間帯である。まだ空気の冷たいロンドンの街の横断歩道で浴びる太陽の光と風が,何となく気持ちよかった。
このマダムタッソー蝋人形館,小さいのが東京タワーのところにもあって,ずいぶん昔に見た覚えがある。
蝋で本物そっくりの人形を造っているわけだが,おそろしいくらいに似ている。
本場本家の人形を見ようということで,ここが見学地に選ばれたのだ。
しかも人気の見学地で,混むからというので,朝一番に行った。それでもすでに行列だった。
都会では何でも行列であり,行列が当たり前という感覚である。
金沢では行列なんかするくらいなら見ないと言いたいところだが,いつ来られるか分からないロンドンである。
行列しながら待つが,感心したのはその入場料金で,大人料金,子ども料金のほかに家族料金というのがある。「family」と書いてあって,「大人2人子ども2人」または「大人1人子ども3人」という組み合わせなら,一人一人が入場するよりお得な料金設定である。
なかなか粋な取り計らいである。日本でそんな入場料金を見たことがない。石川県のスキー場なんて子ども料金すらなく,小学生でも大人料金で滑る。
蝋人形館ではたくさん人の写真ばかり撮っていたような気がする。マリリン・モンローちゃんとだけは写真を撮ってもらってきた。
まあ,一回行けばいいかな,という感じのところである。ただ,実物大の人物,やはりたいていは背が高い。西洋人は背が高い。今回訪問したところでは,スウェーデン,デンマークはみんな背が高かった。見上げる人ばかりである。しかし,イギリスでは日本人と同じくらいであった。島国は同じなのかな。
さて,この後みんなと分かれて自由行動である。とはいえ,石原氏,玉木氏,松本氏と一緒にナショナル・ギャラリーという美術館へ行く。
トラファルガー広場に面している。ここがまた無料である。
集合時刻を決めて分かれる。しかし,収集してある絵の多いこと多いこと。約束の時間ではとてもじゃないが見きれない。そんなにたくさん,しかもすごい作品があって無料である。
中で目に付いたのは専門の解説員である。小さな団体ごとに解説員がついている。
このナショナルギャラリーの専属のようだが,収集されている作品についてよく知っている人であろう。
小学生の子どもたちには子どもに分かるように,大人には大人用にしゃべっているようであった。しばらく小学生の低学年の団体にさりげなくついてみる。「この部分は何だと思う?」とか小学校の授業のように,一人一人にあてたりして,分かりやすく美術作品の解説をしていた。
こんなこと,石川県の美術館では見たことがない。
最後に新しくできた階へ行く。コンピュータのソフトで美術品の紹介をしているのだ。
自分の知りたい作品を選びマウスでクリックすると解説があらわれる。フルカラーのきれいな画面である。すべての席が小学生とおぼしき子どもたちに占領されていたので,後からのぞき込むだけだったが,なかなかおもしろいものだった。
CD−ROMといって,美術作品解説のコンピュータソフトを販売していたが,美術の教師ならすぐ買ったところだ。
約束の時間がきてナショナルギャラリーを出る。トラファルガー広場を歩いていくと,鳩がたくさんいる。えさをやっている人もいる。それはいいんだけど,いきなり空から鳩のふんが降ってくる。幸いにして,頭にはあたらなかったが,パンフレットを直撃される。ロンドンでもウンのつく私である。
昼ご飯は簡単にということでピザの店に入る。
4人いたので,レギュラーサイズのピザで,4種類を注文する。
4人で4分の1ずつ交換して4種類の味を味わってみようというのだ。まずは,ビールを注文。イタリアのビールがないか?などとロンドンでとんでもないことを聞く。毎度おなじみ「Do you have 」である。しかしなかったので,何だか変わったビールを注文。
さて,このピザ,レギュラーサイズで一番小さいのだが,小さいはずが厚さ2センチあまり。素晴らしくたっぷりの量である。おまけにビールは2本目を飲んでいる。全部食べ切れない。あげくのはては,ウエイトレスの女の子を呼んで,タバスコ(ペッパーソース=赤唐辛子の辛いソース)がないか聞いて,それをかけておつまみとして食べる。
ちなみに,日本ではピザやらスパゲッティというと必ずタバスコが置いてあるが,イギリスにはそんなものは置いてない。まあ,タバスコといえばアメリカのもので,イタリアにはそんなものはないのだろうが,もしかしてイギリスにもないかと思って聞いてみたのだが,ちゃんと出してきてくれた。これまた,毎度おなじみ「Do you have」 である。
それでも食べ切れなくて,おりづめをもらってつめてきた。なーんてやろうと思ったけど,持ってきても食べるはずがないのでやめた。
ところで,「持ち帰り用のおりづめください」英語で何と言うのだろう。そんなものあるのかな。
しかし,またもや食べものを不本意にも残す私である。やっぱり外国って量が多いよ。これじゃあ,みんな大きくなるはずだ。女の子も若いうちはすらっと背が高く素敵なのだけど,これじゃあ,おばさんになってみんなデブになるはずだ。
さて,いよいよ欧州を後にする。最初に着いたヒースロー空港へと向かう。
しかし,このヒースロー空港で最初で最後の大事件(?)なにしろ,イギリスはのんびりしている。搭乗手続きをするための列が長い。もう少し能率よく,協力してやれば早いだろうに,自分の仕事以外はやろうとしない。
団体の担当者はいくら個人のところが混んでいても手伝いに来ない。人の仕事を取ってはいけないという発想である。
この搭乗手続きで,どうも変だと思ったのだが,手荷物を預かってくれない。しかも搭乗券に座席番号がない。なんだかこれでいいという話で,そのまま搭乗口に入る。しかし,スーツケース持って搭乗口に行くことなんてない。それにもかかわらず,スーツケース持ったまま,入る。
向こう(英国航空)のミスなのだ。
中で一人,池端氏がX線の検査機にひっかかる。料理用の包丁が映ったからだ。普通なら,こんなところをスーツケースは通らない。手荷物としてまとめて飛行機の下に納められる。しかし,搭乗手続きで受け取ってくれないのだから,そのままここまで持って来た。それでX線に引っかかることになる。
しかも重いスーツケースが飛行機の座席に納まるわけがない。みんなで変だ変だと言いながら,ゲートまで行く。そこにスーツケースなんて持ってきているのは我々くらいである。(まだ数人いたけど。)
で,ゲートで事情を言って,そこでスーツケースを預ける。しかも,座席番号はここで発行しているので長蛇の列である。
やっぱり向こうのミスなのだ。
しかも禁煙席のはずが,喫煙席にまわされている。この際どうでもいいやと思いながら,座席に座る。
本来なら,このヒースロー空港で2時間以上時間があって,のんびり最後のコーヒーでも飲もうと思ったのに,時間など一つもない。それもこれも英国航空のせいだぁ!
おまけに座席に座っていると,機内アナウンスで,座席の数以上に搭乗券を発行してしまい,ただ今調整中です,離陸時刻は遅れますときた。そんなの英国航空のせいだぁ!
そんなこんなで出発時刻は,予定を15分あまり超えて,16時45分になってしまう。